LOGIN(え? 俺は、いったい何を頼まれたんだ!?)
唐突に投げかけられた言葉の真意を測りかね、思考が停止する。だが、その声に含まれた微かな震えと、縋るような熱量に、俺の答えは決まっていた。
「え、うん」
咄嗟にそう引き受けてしまったが、後悔はない。元々、この寂しがり屋な魔王の面倒は一生見ていくと心に誓っていたのだ。それが「神をも越える」存在としての役目なのか、あるいは彼女の言う「未来の旦那様」としての務めなのかは分からないけれど。
「……んふふ、言ったな? 約束だぞ」
サナは満足げに喉を鳴らし、俺の顔を自分のお腹にさらに深く押し当ててくる。至近距離で見える桃色にハート柄のパンツと、柔らかすぎる肌の感触。今の俺にはこの甘い地獄から抜け出す術はなかった。
(……まあ、いいか。今はこれを堪能させてもらおう)
俺は観念して、サナの柔らかいお腹に顔を埋めたまま、彼女から託された言葉の重みを噛み締めることにした。
♢桃色の朝食と過剰な愛着 俺たちはテントの幕を閉め切ったまま、二人きりで朝食を摂ることにした。サナは朝一番の「特訓」と「告白」を経て、完全に上機嫌モードに入っていた。
「ほら、そら。あーん、だぞ♪」
サナは蕩けるような笑顔を浮かべ、自分の膝に俺を座らせるようにして抱き寄せると、丁寧に切り分けた干し肉のスープを口元まで運んでくる。
「……サナ、自分でも食べられるよ?」
「いいんだ、わたしが食べさせたいんだから。ほら、口を開けろ」
断る隙も与えないほど、彼女は過剰にベタベタと接してくる。至近距離で見つめてくる彼女の瞳は熱っぽく潤んでいて、その距離感は朝食を食べるというより、まるで雛鳥に餌をやる親鳥か、あるいは愛玩動物を慈しむ飼い主のようだ。
「……ん」
諦めて口を開けると、サナは満足げに「んふふ」と喉を鳴らし、俺の頬をそっと指先で撫でた。
「美味しいか? わたしの愛が隠し味だぞ」
「……隠し味っていうか、サナの距離が近すぎて味がよく分からないよ」
俺が苦笑いしながら答えると、サナはさらに腕の力を強め、俺の背中にその柔らかな胸元を押し当ててきた。ワンピースの薄い生地越しに伝わる彼女の体温と、しっとりとした肌の感触。
「面倒を見ろって言ったのはそらなんだからな。わたしもしっかり、そらの面倒を見てやるんだ」
彼女はそう言って、俺の耳元で甘く囁いた。どうやら先ほどの「頼むな」という言葉を、彼女なりに「互いに依存し合う」という意味に解釈したらしい。
結局、俺はサナにされるがまま、過剰なまでのスキンシップを伴った甘い朝食の時間を過ごした。外の喧騒とは無縁の、二人だけの濃厚なひととき。
(……これ、外に出るのがますます億劫になるな)
俺はサナの至れり尽くせりな介護に身を任せながら、これから始まる下山の道のりを、少しだけ遠く感じていた。
♢朝の境界線と消えない違和感 テントの幕を開けると、外の空気はひんやりとしていて、鼻腔をくすぐる焚き火の煙が現実へと引き戻してくれた。向こうのパーティも、ちょうど簡単な朝食を済ませているところだった。「おはようございます」
俺が声をかけると、リーダーはスプーンを止め、姿勢を正してこちらを見た。
「おはようございます」
(だから、なんで敬語なんだよ……)
昨日、俺の覇気の片鱗(設定ミスの中レベル)に当てられて以来、リーダーの俺に対する態度は明らかに一線を画している。まるで格上の騎士か、あるいは高位の貴族に接するような、隠しきれない緊張感が漂っていた。
「おはよう」
「おはよ」
対照的に、男と女の方はまだどこか寝ぼけ眼で、気さくな挨拶を返してくれた。彼らはあの時のプレッシャーを「山の主か何かの気配」だと思い込んでいるのか、俺個人に対する恐怖心はリーダーほどではないらしい。
「朝食を食べたら、すぐにでも出発したい」
リーダーが手早く食器を片付けながら、確認するように俺を見た。その目は、一刻も早くこの山を降りたいという焦燥感に満ちている。
「ええ。問題ないです」
俺が短く答えると、リーダーは安堵したように小さく息を吐いた。
(……絶対支配の設定、今は最小にしてるはずなんだけどな)
♢桜色の謝罪と不意の執着 テントに戻ると、ちょうど着替えを終えたところだったのか、いつもより余計に可愛らしい装いのワンピースに身を包んでいた。だが、当の本人は柄にもなく頬を桃色に染めて、恥ずかしそうに視線を泳がせている。その気恥ずかしさに耐えきれなくなったのか、もぞもぞとベッドのシーツの中へと潜り込んでしまった。「ほら、サナ出発だぞ……」
シーツからわずかに覗く、マシュマロのように柔らかそうな頬を指先で軽く引っ張ってみる。指から伝わる吸い付くような肌の弾力が心地いい。
「いたいんれすけろ……」
ふにふにと伸びる柔らかく可愛らしい頬を押さえながら、シーツの隙間から恨めしそうにこちらを見上げてくる。その潤んだ瞳で見つめられると、つい悪戯心が疼いてしまう。
♢琥珀の夜明けと不変の信頼(徐々に日が昇ってきた……キレイだ。山で朝日が昇るのを見るのは、前世も含めて初めてかもな) 空の境界線が濃紺から鮮やかな橙色へと溶け出していく。火山の荒々しい稜線が黄金色に縁取られ、噴煙さえも神々しく輝いて見えた。前世では画面越しにしか見ることのなかった絶景が、今は肌を刺す熱気と共にここにある。 俺が小さく伸びをしたその時、リーダーのテントの入り口がゆっくりと開き、眠い目をこすりながら彼が姿を現した。「おはようございます」 俺が自然な調子で声を掛けると、リーダーは一瞬驚いたように瞬きをし、それから恐縮したように深く頭を下げた。「おはようございます。見張りお疲れ様です。……まさか、一晩中お一人で?」「おはよう」 続いて出てきた男の冒険者も、俺の姿を見て感銘を受けたような表情を浮かべている。(ちゃんと見張りをしてた事になったぞ……) 内心で冷や汗をかきながらも、俺は「気にするな」とばかりに軽く手を振った。魔法の結界で守られていたとはいえ、彼らにとっては、この危険な地で自分たちの眠りを守り抜いた英雄に見えているのだろう。 やがて他のメンバーも次々と起き出し、手際よく焚き火を熾して朝食の準備を始めた。パチパチと薪が爆ぜる音が、火山の静寂を活気に変えていく。「そら……。もう起きていたのか。冷たいな、わたしを置いていくなんて」 テントの隙間から、まだ眠たげに目を細めたサナが顔を出した。朝露に濡れたアメジストのような瞳が、朝日を浴びてキラキラと輝いている。彼女は寝起きの無防備な足取りで俺の隣に座ると、当然のように俺の肩に頭を預けてきた。 昨夜の「報酬」の余韻か、彼女の纏う空気はどこか柔らかく、それでいて底知れない魔力が満ち足りたように安定している。「おはよう、サナ。すぐ出発だから、早く目を覚ませよ」「んふふ……お前の匂いがする。それだけで、もう目は覚めているぞ」 リーダーたちが湯気を立てるスープを配り始める中、俺たちは火山の頂、ファイアドラゴンが待つ最深部へと向かう準備を整え始めた。♢焦熱の進軍と前衛の交代「朝食を食べて、さっそく出発しましょう」 俺の言葉を合図に、手早く食事を済ませて出発の準備を整える。使い慣れたテントを魔法で片付け、マジックバッグに収めると、いよいよ本格的な登攀が始まった。 標高が上がるにつ
♢桃色の限界と冷えぬ火照り「嬉しそうじゃないな。もっと遠慮せずに、そらの好きなように……触っても良いぞ?」 サナはそう言って、さらに俺の指先をお腹の深みへと誘うように、ぐいと手を引き寄せた。指先に伝わる柔らかさは増し、彼女の無邪気なまでの誘惑が、俺の理性の防波堤を今にも決壊させようとしている。(勘弁してください。そろそろ限界です……) これ以上この感触を味わい続ければ、理性が焼き切れてしまう。俺は沸騰しそうな脳内を必死で鎮めながら、意を決して彼女の手を緩めた。「そろそろ出るよ。ありがと……気持ち良い触り心地だったよ」「……ん? もう良いのか? それだけで満足したのか?」 サナは名残惜しそうに、大きなアメジストの瞳を潤ませて見上げてきた。その潤んだ瞳と、お湯から覗く白い肌のコントラストは毒が強すぎる。(これ以上くっついてこないでくれ!)「ボクは、先に風呂から出て待ってるね」 強引に立ち上がり、俺は前をタオルで隠しながら、逃げるように洗い場へと向かった。背後でサナが「むぅ……そらは気が早いな」と呟く声が聞こえたが、振り返る余裕なんて微塵もなかった。 脱衣所へ飛び込み、急いで服を身に纏う。清涼な布の感触が、火照りきった肌に心地よい。(はぁ……。落ち着いた……) 大きく息を吐き、ようやく心臓の鼓動が緩やかになっていくのを感じる。鏡に映る自分の顔は、火山の熱気よりも赤く染まっていた。 しばらくして、サナも満足したのか、あるいは少し寂しくなったのか、湯気を纏いながら浴室から出てきた。♢湯上がりの夜風と魔王の課題 浴室から出てきたサナを呼び止め、まだ湿り気を帯びた彼女の背中をタオルで拭うのを手伝う。白磁のような肌は湯上がりの熱を湛えていて、指先が触れるたびに、先ほどまでの「柔らかさ」の記憶が鮮明に蘇り、また少しだけ鼓動が速くなった。 着替えを済ませると、俺たちは再び転移を使い、火山の夜営地に張ったテントの中へと戻った。周囲はすっかり夜の静寂に包まれ、時折、遠くで火山の地鳴りが低く響いている。「お風呂、良かったなぁ! そらとの触れ合いも、最高だったぞっ♪」 テントの中、サナはふかふかの寝具の上に寝転がり、幸せそうに手足を伸ばした。「あ、うん。そうだね。疲れたけど」「疲れたのか? 大丈夫か? 今日は何も討伐はしてないぞ」(美少女のサナさん
腕を動かせば、ぎゅぅと密着た腕に伝わるその瑞々しい柔らかさが、ぬるりとしたお湯の感触と共に全身の神経を逆撫でする。華奢な体つきからは想像もつかないほど、その部分は確かな存在感を主張し、俺を優しく、けれど逃れられない檻のように包み込んでいた。「んふふ……。そらの腕、すごく熱くなっているぞ。……どうした、顔まで真っ赤ではないか」 サナはいたずらっぽく微笑むと、さらに深く、俺の腕を自分の胸の谷間へと沈めさせた。潤んだアメジストの瞳が至近距離で揺れ、濡れた睫毛が瞬くたびに、甘い毒のような誘惑が俺の理性を溶かしていく。「……我慢したのは、昼間だけだ。今はもう、わたしを抑えるものなど何もないぞ?」 湯気の中で、彼女の吐息が俺の頬を熱く撫でた。♢秘湯の誓いと桃色の余韻「我慢してたのか。そ、それはスゴいな……エライな!」 俺は照れ隠しも半分に、彼女の濡れた髪をかき分けるようにして、その小さな頭を優しく撫でた。 すると、その表情は一瞬でパァッと明るくなり、まるで春の陽光を浴びた花のように満面の笑みが咲き誇る。アメジストの瞳が歓喜に揺れ、俺の手に擦り寄るように甘えて頭を預けてきた。「ご褒美のキスはないのか?」(え、そんなシステムになってるの?) あまりに当然のように、そしてあまりに可愛らしく小首を傾げて強請られ、俺の鼓動はさらに一段階ギアを上げた。湯気のせいだけではない熱が全身を駆け巡る。 至近距離で見つめてくる彼女の肌は、お湯に温められて柔らかな桃色に染まっている。俺は意を決して、その熱を帯びた、吸い付くような感触の頬にそっと唇を寄せた。「……はい、ご褒美」 触れた瞬間に伝わる、マシュマロのような柔らかさと瑞々しい質感。彼女は一瞬、驚いたように目を丸くしたが、すぐにトロンとした甘い顔をして、俺の腕にさらに強く抱きついてきた。「おぉー、これで明日も頑張れるなっ!」「それは良かった」 自分の戦果を誇るように胸を張り、俺の腕を包み込む柔らかな感触をさらに強調させてくる。その無邪気さと、時折混じる確信犯的な色香のギャップに、俺はもう降参するしかなかった。♢湯煙の唇と魔王の独占欲「そらにもしてやるぞ」 返事をする間もなかった。強引に引き寄せられたかと思うと、目の前がアメジストの色彩で塗りつぶされる。 触れたのは、桜色をした、驚くほどぷるんとした柔ら
俺が念じたのは、俺の配下である最古のドラゴンの王・ドラキンの縄張りで、最初に住んでいたあの懐かしい家。——転移。 一瞬の浮遊感の後、視界に広がったのは、火山の乾燥した空気とは無縁の、清涼な魔力に満ちた懐かしい光景だった。ドラキンの気配が遠くに感じられる、静謐な隠れ家だ。「ここは……?」「ボクの原点みたいな場所だよ。ここなら、最高のお風呂があるんだ」(俺の始まりの場所。転生して……ここから、全てが始まったんだよな) 俺は不満げだったサナを促し、木造りの温もりがある浴室へと向かった。湯気が立ち上る浴槽には、ドラゴンの魔力によって温められた、万病を癒やすとされる名湯が満ちている。「そら、一緒に入るぞ。……当然だろう?」 サナは服を脱ぎ捨てると、まだ泥のついた足のまま、けれどどこか嬉しそうに俺の腕を掴んできた。 二人で湯船に浸かると、まとわりついていた汚れがさらりと溶け出していく。白く滑らかなサナの肌が露わになり、お湯に濡れたアメジストの瞳が、湯気越しに熱っぽく俺を捉えた。「ふふ……極楽だな。泥の不快感など、一瞬で吹き飛んでしまった」 サナは俺の胸に背中を預け、ぷかぷかと浮かぶように身を委ねる。浴室に響くのは、心地よい水音と、二人の静かな吐息だけ。火山の夜営地でリーダーたちが今頃首を傾げていることなど、今の俺たちにはどうでもいいことだった。♢湯煙に咲く紫のアメジスト(相変わらず細く、胸はふっくらとしてスタイル良いですなぁ……) 湯気で白く霞む浴室の中で、俺は何度目かもわからない感慨に耽っていた。隣に座り、丁寧に体を洗うサナの姿を盗み見るたび、こんな至高の美少女と一緒の湯船に浸かっている自分の境遇が、奇跡を通り越して何かの間違いではないかとさえ思えてくる。 サナが、洗い終えたばかりの白磁のような肌を輝かせて、俺の隣へと滑り込んできた。 お湯から覗く彼女の肩先は、華奢でありながらも瑞々しい質感を湛えている。濡れて肌に張り付いた髪の隙間から見えるうなじは、驚くほど白く細い。だが、その繊細なラインとは対照的に、豊かな膨らみを帯びた胸元が、お湯の浮力を受けてゆったりとした曲線を描き出していた。 きゅっと引き締まった細い腰から、お湯の中でなだらかに広がる太もものライン。それは、少女特有の初々しさと、魔王としての神秘的な色香が絶妙な均衡で混ざり合った
普段の彼女なら、俺の視線に気づいた瞬間に「どうだ? 今日のわたしは可愛いか?」と、これ見よがしにポーズを決めてくるはずだ。だが、今の彼女はどこか様子が違った。膝を抱え、少しだけ火照った顔でじっと焚き火を見つめている。「肉か、わたしが焼くか? 肉を焼くくらいできるぞ!」(ん? なんだか、いつもと違うぞ……どうしたんだ!?) 不意に提案された言葉に、俺は思わず動きを止めた。いつもなら俺に甘えること、俺に何かをしてもらうことを至上の喜びとしている彼女が、自ら進んで「焼く」と言い出したのだ。「サナ大丈夫か? 何かあったの?」「大丈夫だぞ? 何もないぞ」「なら良いんだけど……」 サナは火の粉を散らす焚き火に向かい、慣れない手つきで串に刺した肉をかざし始めた。その横顔は真剣そのもので、時折、熱気に耐えるように瞳を細めている。(もしかして……昨日のディナーや、さっきの『喜ばせる』って言葉を気にしてるのか?) 俺を喜ばせるために、彼女なりに「尽くそう」としているのかもしれない。そう思うと、彼女の不器用な献身がたまらなく愛おしくなった。 俺はサナが肉を焼いてくれている間に、アイテムボックスから熱々の出来立てのスープを取り出し、彼女の隣にそっと置いた。「ありがとう、サナ。これ、飲みながらやって。火の側は暑いだろ?」 サナは一瞬、驚いたように目を見開いたが、すぐにアメジストのような瞳を蕩けるように細めて俺を見上げた。「……ん。そら、優しいな……」 彼女はスープの湯気に包まれながら、幸せそうに、けれどどこか照れくさそうに肉を焼き続ける。背後ではリーダーたちが、俺たちの放つ独特の「新婚のような空気」に、どう反応していいか分からず必死に肉を咀嚼する音だけが響いていた。♢紫煙の誓いと健気な献身 サナが慣れない手つきで一生懸命に焼き上げた肉を、一口運ぶ。 表面は香ばしく、中は驚くほどジューシーで、塩加減もこれ以上ないほど絶妙だった。「……すごく旨いよ、サナ。上手に焼けてるよ!」 俺がそう告げると、サナはパッと顔を輝かせたが、すぐに照れ隠しをするように視線を落とした。今日の彼女は、いつもの自信満々で奔放な「魔王様」の面影がどこか遠い。アメジストのような瞳を潤ませ、俺の顔色を伺うようにチラチラと盗み見ては、甲斐甲斐しく世話を焼いてくる。「そら、口元にタレがつ
「それと、もう出発するけど……良いの?」「準備は出来ています」 リーダーの答えは即座に返ってきた。足元を見れば、確かに旅の支度は完璧に整っている。俺が来るのを確信して、ギルドの裏で待機していたのだろう。「今回はファイアドラゴンだけど大丈夫? 出現するかもよ」 一応、念を押してみる。鱗の採集とはいえ、相手は伝説級の魔物だ。生半可な実力では、遭遇した瞬間に塵も残らず焼き尽くされる。「覚悟は出来てます」 男のその言葉に、嘘偽りはないようだった。死への恐怖よりも、高みを目指したいという冒険者としての矜持が勝っている。「……そら、どうするのだ? わたしは、お前さえ良ければ、この者たちの羽虫のような羽音くらいなら我慢してやるぞ」 サナは少しだけ不服そうに、けれど俺の判断を尊重するように寄り添ってくる。彼女にとっては、俺との二人きりの時間を邪魔されるのは本意ではないだろうが、俺が許可を出すなら異論はないといった様子だ。「分かった。じゃあ、一緒に行こう。ただし、自分の身は自分で守ってくれよ」 俺が頷くと、彼らは一様に安堵したような、それでいて新たな戦場へ向かう高揚感に満ちた表情を見せた。♢灼熱の麓と再度の案内「じゃあ行こうか。って……みんなで移動するなら、馬車を探さないとだよな」 ふと思い立って口にすると、リーダーは待ってましたと言わんばかりに頷いた。「馬車の手配は出来ています」「準備良いね。助かったよ!」 俺が感心して告げると、彼は少しだけ誇らしげに表情を緩めた。そのまま彼らが手配していた馬車に揺られること二日間。街道を抜け、景色が次第に荒涼とした岩場へと変わっていく。辿り着いた先には、以前の山とはまた違う、噴煙を上げる禍々しい巨躯がそびえ立っていた。「リーダーは、今回の目的地も詳しいの?」 馬車を降り、乾燥した熱気に目を細めながら尋ねる。「何回か別件で訪れた事があります」「案内も頼めるかな」「お任せください! また、途中で夜営になります。準備は大丈夫ですか?」 リーダーの頼もしい返答に、俺は隣で「ふむ、また野宿か……」と、どこか楽しげに俺の腕を引き寄せている彼女の感触を確かめながら頷いた。「うん。問題ないよ」「では、行きましょうか」 一行は再び、リーダーを先頭にして険しい山道へと踏み出した。足元からは地熱が伝わり、空気は微かに
♢魔王の覚醒と愛執の朝「サナもステータスってあるの?」 俺の問いかけに、サナは腕の中に潜り込んだまま、とろけるような笑みを浮かべて答えた。「ん? あるぞ……?」 彼女は俺の首筋に顔を寄せ、吸い付くように甘いキスを落とす。その唇の感触が心地よくて、俺の思考は一瞬だけ空に溶けそうになる。「見れるの?」「見るか? わたしのことが気になるかぁ……? んふふ、可愛い奴め」 サナはベタベタと俺に甘えながらも、空中に薄い光の膜を展開した。やはり本人以外のステータスは完全には開示されない仕様らしく、詳細なスキルや数値は霧に包まれているが、主要な項目だけが浮かび上がる。名前:サナ性別:女レ
ワンピースの柔らかな生地が肌に触れ、彼女の膝が俺の脇に潜り込むたびに、例の桃色のハート柄が視界の端で揺れる。「……そらの鼓動、さっきよりもずっと速いぞ。どうしたんだぁ……?」 彼女は俺の胸に耳を押し当て、楽しそうにクスクスと喉を鳴らした。サナの紫の髪がさらりと俺の頬を撫で、甘い香りが肺の奥まで満たしていく。俺の腕の中に収まる彼女の身体は驚くほど柔らかく、そして温かい。 俺は諦めたように、彼女の細い腰に手を回して引き寄せた。「……お前には、本当に敵わないな」「当たり前だ。そらの弱点は、全部わたしが握っているんだからなっ♪」 サナは満足げに目を細めると、顔を上げて俺の耳たぶを優しく
♢桃色の特訓と不自然な誘惑 下山を急ぐ一行の中で、サナだけはどこか楽しげに、リズムを刻むような足取りで俺の隣を歩いていた。リーダーたちが背後で「さっきのプレッシャーは何だったんだ……」と怯えたように囁き合っているのも、今の彼女には届いていないらしい。 ふと、サナが俺の少し前を歩き始めた。「そら、見てろよ。自然に、だぞ……自然にするから」 彼女はそう言うと、わざとらしく道に落ちている小さな枝を跨ごうとした。「……っ」 不自然に大きく足を振り上げた瞬間、ひらりとワンピースの裾が舞う。そこには、俺が先ほど確認したハート柄が、隠す気などさらさらないと言わんばかりの主張を伴って現れた。「
(あ……さっきの話の続き、ですか?) ピンクにハート柄の、あの「チラ見せ」の話だ。彼女の中ではまだ終わっていなかったらしい。「……うん。頑張って」(何を言ってるんだ俺は……。そんなことは頑張らなくていいよ……と思う反面、心のどこかでそれを楽しみにしている自分がいた) そんな俺の矛盾した返事を聞いて、サナは「よしっ」と小さく拳を握り、満足げに微笑んだ。そのニヤニヤとした表情を見る限り、次はどんな「自然な」演出を仕掛けてくるつもりなのか、想像するだけでこちらの顔が熱くなる。「……終わったぞ! 結界石、これだけ採れた!」 ちょうどその時、汗を拭いながらリーダーたちが戻ってきた。その手に







